「頑張り」

BY IN 小説 NO COMMENTS YET



夕焼けに染まる山並みを、トランペットを吹きながら眺めるのが好きだ。
屋上でたった一人。
お世辞にも上手いとは言えない音だけど、思いっきり吹くと心がすっとする。

「あれ、先客がいる」

そんな私のホームに、突然の来客。
見たところ運動部っぽい、背の高い男の人が立っていた。

(続きを読む…)

進捗(えぇっ!? 二ヶ月でこれだけ!?)

BY IN RPG製作 2 COMMENTS

毛糸です。次回作の製作に取り掛かっているのでとりあえずお披露目な感じで更新していきましょう
今後も忘れなければ定期的に進捗お知らせしながらやっていきたい所存

現在はプロットが一通り完成、キャラデザしつつ立ち絵などを描いている感じです
まずはメインヒロイン+サブヒロイン二人の立ち絵ラフ↓

(続きを読む…)

珍々満語「回転寿司」

BY IN 小説 NO COMMENTS YET



回転寿司の始まりは1958年の大阪、元禄寿司という店から始まったそうだ。
多数の客を低コストでさばく。
そうして私たちは高級だった寿司を安く美味しく食べられるようになった。

************************

2016年の現在、寿司はさらに身近になった。
回転寿司チェーンがしのぎを削り合い、
寿司だけではなくラーメンやスイーツなど様々なものに手を広げ
店には家族連れも目立つようになった。

************************

先日、久しぶりにとある店舗へ行ってみた。
するとそこには板前さんはおろか、回っている寿司も無い。
テーブルにはタブレット端末が備え付けてあり
そこで食べたいものを注文すると
新幹線に乗って席に届くというシステムだった。

画期的だなと感心した一方、どこか寂しい気持ちも湧いてきた。
画一的に整えられたシャリに今解凍されたと言わんばかりの冷たいネタ。
握っている人はおろか、店員と話したのも入店時と会計時のみ。

************************

料理は温かい方が美味しい。
それは温度の話ではなく、心の話だ。
母が作ってくれた料理が料亭の味とは比べ物にならなくても
美味しいように、作った人の思いの温かさというのは
どうやったってその皿に乗ってくるものである。

それが感じられない、どこか無機質な寿司を
喜々として受け入れてている社会に、
ほとんどがキュウリで誤魔化されている
イクラ軍艦のようなむなしさを感じた。

珍々満語「自撮り棒」

BY IN 小説 NO COMMENTS YET



先日、あるところに観光に行くと、女性2人が細長い棒を持って寄り添っていた。
棒の先にはスマートフォンがくっついている。
よくよく観察すると、彼女たちは写真を撮っているようだった。

****************

これが噂の『自撮り棒』というやつか。
よくよく周りを見渡すと、外国人やカップルなど、様々な人が
頼りない細長い棒に大事な携帯電話を付けて掲げている。
もし落としたら大変なことになるのに、怖くないのだろうかと思ってしまう。
心配する気持ちと同じように、私の心には少しばかり寂しい気持ちも湧き上がってきた。

****************

旅行にはカメラが付き物だ。
昔は個人用のフィルムカメラが、『写ルンです』のようなインスタントカメラ。
時代は変わってデジタルカメラが登場した後も、自分を自分で撮るというのは難しいことだった。
でもせっかくの思い出を残したい。
そこで近くにいる人に一声かける。
「写真をお願いしてもいいですか」

****************

ともすれば大事な資産であるカメラを持ち逃げされるかもしれない。
意地悪な人で適当に撮られるかもしれない。
リスクを挙げれば様々あるが、そこには人を信用するという前提があった上でカメラを預けていた。
カメラだけではない。
一声かける、そのコミュニケーションで、私たちはそこの土地に行ったという
証拠の写真だけではない、何か人の温かみのようなものも一緒に残していたように思う。

****************

「はい、チーズ」

写真を撮る時の定番のセリフだが、こんなセリフもそのうち聞かれなくなるかもしれない――
そんなことを思いながら、無機質な鉄の棒の間を早足で抜けた。