気が付くと電車に乗っていた。
いつ、どうやって、どこから乗ったのか全く思い出せないが、車窓から見える風景には覚えがあった。
段々と日が沈んでいく中、自分が生まれ育った田舎に近づいていく。
やがて聞きなれた駅名がアナウンスされると電車は止まった。
果たしてここは本当に自分の故郷なのだろうか……不思議な感じを抱きつつもホームから降りると、駅から真っ直ぐ行った山へと続く神社でお祭りをしているような灯りが見える。
こんな時期に祭りなんてあったっけ……? またもや疑念にかられるが、せっかくなので祭りを見に行くことにする。そこには出店もなく、提灯のオレンジの光と神社の真ん中の道を踊る笠をかぶった人たちと、それを沿道で見守る人たちが居た。
あっけにとられて……しかしどこか懐かしい感じもするその光景を眺めていると、ふと何かに背中を押されるように踊りの列に入り込んでしまった。
驚く様子も無い踊る人々に疑問を抱くが、ゆっくりと、そして悲しげな踊りに誘われ、見よう見まねで踊り始める。あぁそうだ、これは幼い頃祖父と祖母が死んだ年の夏祭りに見たモノだ――
懐かしさの正体を思い出し、幼い頃可愛がってくれた祖父や祖母のことを思い出しぼんやりと踊りを踊っていると、突然沿道から手が伸びてきた。
「夏樹君だよねっ!?」
急にひっぱられて列の外に出てしまった。戻らなければ――
「絶対そうだ!なんでこんなとこに居るの!ってかしっかりしなさいよっ!」バチンッ
うつろだった思考が段々はっきりしてくる。俺は一体今まで何を…?
「良かった……意識ははっきりしてる?」
「あ、あぁ……」
「なんでこんなとこに居るのか知らないけどさぁ……ほんと、危なかったんだからね」
「危ないって、何が?」
「……ところで私、誰だか分かる?」
俺を引っ張ったのは昔じいさんの家のそばに住んでいた女の子だった。おばあさんが春に亡くなり、遺品整理や最後の思い出にとここに帰ってきていたそうだ。自分でもなぜここに居るのかはっきりしない俺は、彼女の好意で彼女の家、正確にはおばあさんの家だが、泊まらせてもらうことにした。
「まだなにかはっきりしない顔をしてるわね?」
「そりゃ、自分でも記憶が無いうちにここに来てたし、それにあの祭りってなんだ?小さい頃に見た覚えはあるけど、出店もないしとても祭りって雰囲気じゃない」
「……いいわ。私はアレが何か知ってるから特別に教えてあげる」
「あれは”死者の盆踊り”よ」
「……Z級ホラー映画?」
ギロッ
「ご、ごめん……」
「盆踊りといえば徳島の阿波踊りなんか有名だけど……あんた、なんであんな笠を被ってるか、知ってる?」
「そういや、なんでなんだ?」
「……あれは、死んでる人だからよ」
「死んでる、人?」
「そ。死んだ私達のご先祖様」
「……それと笠にどんな関係があるんだ?」
「そうね、死んだ人が歩いてたらびっくりするでしょ?でも顔を隠してたらどう?分からないでしょ?つまりそういうことよ」
「……っておい、じゃあさっきのはまさか」
「ご明察! つまりあんたは死んだ人と踊ってたわけ」
「おいおい……でも普通の祭りだと人間も混じってるだろ? あれは何ていうか……そういうのは居なかったように感じるんだけど」
「それもご明察。もちろん先導役で何人かは普通の人間が居るけどね、このお祭りはちょっと別なのよ」
「別っていうと?」
「ほら、お盆ってよく地獄の釜が開くーとか言うじゃない? あれって本当らしくてね」
「地理的な関係なのか何なのかは分からないけど、この土地には何でかご先祖様以外の”何か”が一緒にやってくるのよ」
「それを盆踊り――まぁこっちじゃ区別して『神送り』とか言うらしいけど、向こうの世界へ還してあげるわけ」
「先導役の人も何人か混じってるけど、大体が今年死んだ人よ」
俺は開いた口が塞がらなかった。荒唐無稽のまるで漫画の話のようだったが、淡々と語る彼女の表情はどうも嘘をついてるようには見えず、そしてまた先ほどまでその行列に混じっていた身としては、彼らから普通のモノとは思えない得体の知れなさを確かに感じていたのだ。
「それじゃ俺はなにか、あのまま踊ってたら”向こう”に行ってたってことか……」
「そういうこと。私がいて良かったわね、夏樹君?」
「お、おう……ありがと」
「んっふっふー。別にいいのよ。ところであんたこんなところに居るってことは暇よね? 暇でしょ? というか命の恩人の命令なんだから聞いてくれるわよね?」
「えっ、おい、何なんだよ?」
「ちょっとねー、私民俗学を専攻しててね? この家に残ってる資料を全部確認しようと思って。だから、付き合って?」
『付き合って』の一言にドキリとした俺はバカだったと、数年後になって悔やむことになる。
あの時口約束だけして逃げればよかったと。
――とにかくこの夏の再会が、俺の人生を大きく狂わすきっかけとなったのだった。
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夏用に考えていたあらすじその2。
もっと中心部分を膨らませて民俗学チックな話題を入れようと思ってましたが、
別な話を思いついたので結局そちらを採用しました。
あらすじなのでところどころおかしいですが、そこら辺はご勘弁を!
ちなみに笠を被るくだりはホンモノ。顔を隠すことで死者が混じっても安心、というわけなんですね!
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淡々とした印象を受けましたがあらすじだからですねw
この話も面白そうですが話をどう広げるかが難しそうですね
ホラー兼ハートフル的な?
両方アイデアより演出で勝負なジャンルですよねー
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このあと夏目友人帳的な流れになったりするんだろうか。それともぬーべー的な!
てか小説タグだけだと誰が書いたかぱっと見わからんすねw
HNも書いた方いいんだろうか。