父はとても厳しい人だった。
子供の頃はゲームどころか友達すら作ることも許されず、”正義”であるために毎日勉強させられていた。勉強だけじゃない。武道も一通りやらされた。
『正義であれ』
それが父の口癖であり、家訓だった。お前にも私の血が流れているのだから、ゆくゆくは悪を裁く、その名の通り正義の人となるのだ。そう毎日聞かされて過ごした。
中学生になって反抗期を迎え、俺は初めて父に歯向かった。結果は折檻という名の暴力だった。高校進学と同時に家を出ることを決意した。
今までの生活が嘘のようだと思った。好きなモノを食べ、部屋も適当に散らかし、友達と遊ぶ。もちろん生活費を稼いだりするのは大変だったが、それよりも楽しさが勝っていた。
そのうちいわゆる不良と呼ばれるグループと絡むようになって、父のおかげというのがちょっと癪だが、ずっとやってきた武道のおかげで俺は周りから一目置かれるようになった。バイトをしなくても金が入るようになった。
高校を辞めた。行かなくても生活出来るからだ。際どい商売をしている先輩とつるんで、スリリングな毎日を過ごす。こんな充実感が、今まであっただろうか。名前とはかけ離れたことをやってるな、と先輩から笑われた。
そうして家を出てから何年経っただろうか。ある日、アパートに戻ると小さくなった父が待っていた。
「……!!!」
何かに激昂して襲いかかってきた父に、俺は積年の恨みを込めて拳を突き出した。父はあっけなく倒れた。
「……ふむ。以上が顛末かね」
「はい、そうです」
結果的に父は死んだ。俺が、殺した。怒りとか悲しみとかそういうのは湧いてこず、あまりにあっけなさすぎて、数日経って取り調べを受けている今もにわかには信じられていない状況だ。
「子どもがグレたゆえに、ねぇ……」
「……」
「あ、そうそう。お父さんの家にこんな書き置きがあってねぇ」
『正義のために』
「って」
……なぁ、父さん。それは何て読むんだろうなぁ。
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というわけで今週から週替り更新のテーマは『正義』となります。
先日ツイッターで出たれげーぶで変身ヒーローモノやろうかと思ってましたが、あまりに安直かと思ってこういう話に。
来週はアロルノ先生の番ですよー
305開発部ログ
/ 305開発部ログ4 Comments
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よお正義。名前ネタで来るとは思ってなかったですね。
名前に気づけるポイントが3、4箇所くらいありましたけどちょっとクドくないですか? 核心部分だし気づいたらニヤリくらいでいい気もします。
いつも分かりにくいって言われるので工夫した結果がこれだよ!まあ自分でも書いてて多いかな、とは思ってた!
ネタ的にはいいかな、って思うんだけどそこまでの持ってき方がなんかイマイチな感じですわ
正義!父さんは何を考えていたのか。
それを正義といっしょに考えると切ないですね。
好きです。
遅ればせながら読みました、ほろりと哀しくなる感じがまたなんとも。
父親の思いを受けて正義はどう思ったのか、そこに余韻があるのがいいですね。
↑名前のポイントは難しいですねえ、こういうやり方もいいと思いますし、
最後あたりで確定させる表現がドーンとひとつでもいいと思いますし。
この辺好みなので何とも難しいところですね(・∀・)