『現実②』

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以前の続きになります。読んでいない方はそちらからどうぞ。



友人に動画を見せられて、会社を辞めよう、上京しようと思った俺だったが、しばらく歌もギターもやめていた。すっかりギターの腕も錆び、声も以前のようにはでなくなっていた。
そこで俺は…

①しばらく待つ
②退職届を上司に出す

①を選択した↓↓

そこで俺はギターや声が以前のような実力にもどるまで待つことにした。
今この実力でいきなり上京して、上手くいくとは思えなかったから。
…いや実際のところはそんな理由ではない。この期に及んで俺はまだ怖かったのだ。
現状を変えたいと、夢を叶えたいと泣きながらも、変わることを恐れていた。
変わることへの恐怖、変わることによるリスク。具体的にいえば会社を辞めて上京する。
上京してからはバイトをしながらメジャーデビューを目指す。それはいい。それだけならば。だが、もしメジャーデビューできなかったら。もしできなくて30代になったとしよう。
それでこの不景気だ。いったい誰がこんな歌手崩れを正社員として迎え入れ社会復帰を許してくれるだろうか。俺にはそのリスクを背負う勇気、覚悟が足りなかった。その程度の想い、夢だったのだろうと思われるのかもしれない。でも俺は怖かったんだ。前に踏み出すことができなかった。俺は実力がつくまでという建前の理由で自分を誤魔化し、現状維持という行動をとった。結果は単なる先送り。俺は会社を辞めずに、会社と家の往復生活を続けた。
気付けば社会人になってから5年たち、会社内でも部署で企画のチーフを任されるなど状況は変化した。夢への想いは消えていないという自分への建前なのか歌とギターの練習は続けていた。実力は確かについた。バンド時代と比べても遜色がないどころか、荒さがだいぶとれ、明らかに上手くなっていた。だが、当然会社をやめようか考えたあの頃よりも毎日が忙しくなっていた。部下もでき、それなりに会社では仕事を楽しいと感じる自分もいた。
しかし、この頃、父が急死した。特に身体に持病を抱えていないはずだったが急性心不全だったらしい。あっけなく逝ってしまった。俺はショックを受けたが、1人暮らしのアパートを引き払い、実家に戻り、母と一緒に日々を生きていた。父の死にショックを受けたからなのか母は認知症を発症した。はじめは些細な忘れ物が多かったのだが、だんだんと忘れるスケールが大きくなっていき、しまいには俺のことも分からなくなった。俺も社会人だった為、日中母の様子をみることができない。母は施設にいくことになった。
もう俺は会社をやめることができなくなった。母を支える為に。今ここで会社を辞めてしまったら誰が母を支えるのだろう。施設の利用料が思ったよりも高く、経済的に安定して支える為には正社員を手放さすわけにはいかなくなったのだ。決断するのが遅すぎた。俺は夢を諦めざるを得なくなった。
ちゃくちゃくと時はながれていく。自分が変われば、周囲が変わるとよくいう。だが、自分が変わらなくても周囲の状況は変わっていく。時の流れに沿って。自分が望もうと望むまいと周囲の状況は変わっていく。自分が望む方向に変わることはほぼない。あるとすればそれは望む未来に行動をしっかり起こしていった人だけ。時間はゆっくりと残酷に選択肢を一個一個殺していく。その先にあるのは選択肢を失った手足のない自分。そのころには抗えない。抗えるのかもしれないが、ここまで自堕落に選択しなかった自分だ。きっと抗えない。抗わない。流される。選択肢を自ら作り出すくらいの力がある人でなければ。

BAD END


遅くなりました。ドテチンです。前後半と前回言いましたがすみません。構想を考える内にマルチエンドになりましたw
今回のは少し爪が甘いというか雑になってしまった感が否めません。BAD END故ほとんど話を練らなかったので、流れに任せたらこんな感じに。まぁ今回のは!ではなく今回のも!といった感じかもしれませんねw 前回から時間が空いちゃって温度差がでちゃったのも文に出ちゃってるかも。すみません。
今回の「現実」という話はなるべく、すぐハッピーエンドにはしません。
今回のタイトルは「現実」であって「夢」でないからです。
読んでいて不快に思われる方もいるかもしれません。
でも限りなく自分の中の弱い部分をさらけ出せたらと思っています。
この作品の中の主人公は限りなく自分に近いです。ほぼ映し出しています。
これでも若干今の自分よりは凄いですけどね。今の自分よりは行動力あります。
このBAD ENDは今の自分への警告でもあります。危機感をあおるために書きました。
自分が考える最大のBAD END。自分の意志が介在しない中で夢を諦めなければならない状況。まぁ現実が悪いわけではなく選択しない自分が本当は悪いのですが。
なあなあに毎日を流され始めたら、今回のBAD ENDを読もうと思います。
色々書きましたがこの話はハッピーエンドも書きます。
ですからハッピーエンドまで書けたら毛糸氏のコメントにもあった通り「現実」というタイトルではふさわしくないかもしれないです。流れに身を任せて書くのが悪いというのは分かっているんですがこの作品どう転ぶかわからんです。書きたいハッピーエンドはあります。ですがどういうルートを経てそこに辿り着くのか。辿り着けるのか。いや、辿り着かせましょう。
長々と駄文すみませんでした。それでは。

追伸:本文②の選択以降はまた近いうちに更新します。できれば明後日。

(書いた人: )

3 Comments

  1. 毛糸 |

    想像力あるなぁ
    こんな恐ろしいこと皆考えてんの?
    俺には正直何と戦っているのかさえ理解できないけど、こんなにツラい気持ちで生きている人間が報われないなんて間違ってるぜ。きっと貴方はいつか敵に勝てる! やったれ!

    返信
  2. 毛糸 |

    よく考えたんだが、やっぱり少しおかしい
    まず、俺が「タイトルがおかしい」って言ったのはエンドがどうこうではなく、ドテチンが戦っている相手が「現実」だと思って読んでいたら、その相手が「自分(?)」だったという点
    それもドテチンにとっても「現実」なのかも知れないと気づいたら、おかしいと思っていた部分が分かった
    自分と戦うってのがまずおかしいと思っていたが、現実と戦うのは普通だと思う。そしてドテチンにとっては自分が現実で戦う相手だというのも通る話に聞こえる。でもそれは結局自分と戦っていることになって、まず自分と戦ってるお前は誰だよ。そして勝ったところで自分の負けじゃないか
    夢ってのがこの話の根幹にある気がする。夢=本当に自分がやりたいこと、だと思っていたが、ドテチンにとってそれは違うのか? ドテチンの夢は分からないけど、「歌手になる」「メジャーデビューする」っていうのは「やりたいこと」じゃなくて「現実的に歌を歌い続けるにはこうするしかない」「社会的地位がないのは嫌だ」みたいな「なりたくないもの」「なっちゃいけないもの」みたいな気持ちに感じる。本当に自分がやりたいことが夢で、それに向かって自分の中で葛藤があるのはおかしいと思う。自分の中に敵である自分をつくってしまうのは夢という感情じゃなくて、もっと否定的な感情だよ。自分を否定するから自分の中に敵ができるのであって、それを夢という感情になすりつけてはいけないと思う。

    返信
  3. 土手沈 |

    そこまで解きほぐされてしまうのかw
    ありがとう。たぶん君のいっていることは正しい。
    そもそもなにもできない自分が嫌いなんだ。
    新しい強い自分にうまれかわりたかった。
    そしてこのENDは自分の中にあるネガティブな面を
    出来うる限り詰め込んだ。それっぽい理由をつけて。
    きっと君の指摘がハッピーエンドへの鍵になる。
    君の感じた矛盾はきっと後々役にたつ気がする。
    話に深みを与えてくれるかも。
    毛糸氏がいたら主人公も救われるかな。
    もしかしたら君のコメント使わせてもらうかも試練。

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