滅多に無い人身事故のせいで、駅に着いたのは報せを受けてからもう1時間も経った後だった。いつの間にか日が暮れかけている。駆け下りた降車口からホームに彼女が立っていたのを見つけ、僕は間に合わなかったことを知った。
「ごめん、間に合わなかった」
「ううん、間に合ったよ。ここで会いたかったから」
――僕と彼女が会ったのは高校1年の春。利用者が少ないこの駅で、僕たちは出会って恋をした。それから大人になって、結ばれて。僕は隣の町の会社に勤めるようになって、日々をそれなりに楽しく過ごしていた。
そんな折、彼女が病気だということがわかった。どうやらもう手遅れらしい。いつどうなるか分からない状況。それでも僕たちはいつも通りの日々へ帰ることを願い、そう過ごした。
「でもこんなことになるなら、やっぱり仕事辞めてそばに居れば……!」
「それは結果論だよ。それにほら、病気が治ってまた一緒に暮らすことになったらお金に困っちゃったでしょ?」
「そんなの、きっとどうにでもなったさ! ……せめて、死ぬ時くらいそばに居たかった! 今日だって、事故がなかったら……っ!」
「……うん、分かってる。だけどね、これでよかったの。あの状態じゃ私、何も話せなかったし、病院だったらこうして留まることなんて出来なかった。2人の思い出のこの場所だから、こうして話しが出来るんだよ」
「……ここだから?」
「そう。高校の3年間と、結婚して仕事帰りを待ったりした、ここだから。ここにはたくさんの私が居るの。初めて好きな人と手を繋いだ私、キスをした私、それからそれから……」
そういえば初めて出会った頃も、こんな夕暮れの下、野ざらしのベンチに並んで座って、色んな事を話したのを思い出す。
「と に か く! ……私が私で居られる場所で、少しだけでも最後にお話したかったから。どんなことをしても」
「……うん」
「じゃあ、あとちょっとしかないけど、最後にお話、しよ?」
――空が藍色一色に染まる頃、彼女は次第に薄くなっていき、最後に「愛している」と言って消えていった。僕が返した「愛している」は、彼女の耳に届いたのだろうか。
……幽霊が居たんだから、きっと天国もあるだろう。向こうに行ったら聞いてみることにしよう。
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『大きな桜の~』『ヘッドレスガール』に続きまた死んだ彼女モノです。
好きなんだから仕方ないだろう! とは言っても今回はそういうのを書きたかったわけではなくて、ネタとして黒い部分を思いついたのでこういうテイストになった、という感じです。匂わせすぎず、かといって分からなければ意味が無い。伏線というか、よく読めば「あぁ!」ってなるような書き方って難しいですね。
植物状態だった彼女が病院から抜け出したという「報せ」を受けて急いで向かうが彼女は電車に飛び込み自殺、ということでよろしいか?
自分の死に場所を選ぶというのは重いながらも美しく切ないテーマですよね。今回はその電車の遅れに自分も引っかかるという後味の悪さがスパイスとしてなかなかいい味出してると思いました。
ただ上記のであっているならもっと気づく前と後で読後感の落差が激しい方がいいと思います。気づいたら怖いコピペみたいな?
ここまで書いて全然違ったらどうしよう!!
……ごめん。やっぱ俺の書き方が悪いんやな
>>自分の死に場所を選ぶ
これは面白そうだと思ったんでちょっと考えてみようかな!
こういうテイストの話って様式美的なものが見えますよね、設定の安定感みたいな。
ウチのメンバー以外でも心の琴線に引っ掛かる人は多いんじゃないかしら?
構成に関して思ったこともありまして、ある程度の長さがある話と違って短編だと伏線の張り方が難しいよね。
いや、長さがあるやつはあるやつで、そこかしこに要素を散りばめる必要があるからそれはそれで難しいか?
うーん…………質は違うけど難しいのは同じ、かぁ(・ω・`)
もうちょっと色々な人に読んでもらいたいね―
あと無意識なんだけど自分の好きな設定の傾向が出てきたような気がする。
俺短編書くんでナリマサ先生は長編書いてうpってくだしあ
同じ幽霊ネタともあってか、ヘッドレスガールに雰囲気似てますね!
自然と幽霊と触れ合えるという不思議な世界で、等身大の人物が描かれてるのが、またいい味出してて素敵。
病気で亡くなった彼女の走馬灯のような感じ……でしょうか?
彼女が見た走馬灯なのか、彼が見た白昼夢なのかは分かりませんが、沢山の思い出が詰まるこの場所で、という一言に引っかかったので……
でも「どんなことをしても」という一言も引っかかるので、何かもっとギミックがありそうな……というところまでは考えました!なんかすごく中途半端な考察になりましたごめんなさい!←
ささめき同様、俺も悲恋というかセピアとかモノクロとかそういう色彩の薄い話が好きなようです。
>>でも「どんなことをしても」という一言も引っかかるので
そうです!その通りです!そこなんです!
まぁもうバラしちゃうと彼を駅に送らせようと、彼女の霊が人身事故を引き起こした、っていう話にしたかったんです……難しいね!