――夏休み中・登校日
那子「あっつー…」
澄「あっつぅ…」
小波「……」
那子「どうして学校にはエアコンないんだー」
澄「まぁある学校のほうが珍しいですけど……でもせめて扇風機くらいは……ねぇ?」
那子「そうだなー扇風機なぁー。……さっきまであったんだけどなぁー」
小波「……」
澄「誰かさんが『一発芸やります!エアーマン!』とかやりましたからねぇ」
那子「しかも胸の重さで扇風機の首が折れるとか……あれ、小波チャン? 黙っちゃってどうしたのかな?」
小波「うぅ……ごめんなさいぃぃ……」(´;ω;`)ジワァ
澄「ま、まぁ夏は暑いものですから、たまには季節の風情を楽しむのもいいですね!」
那子「そ、そうだな! 暑い時には暑いなりの楽しみ方をしよう!」
澄「あ、怖い話とかどうです? 夏といったら怪談話ですよ!」
那子「怖い話かー……小波なんかない?」
小波「ふぇ? うーんとね……じゃあねじゃあね、こんな話、知ってる?」
小波「セガサターンのゲームで『百物語』っていうのがあるんだけど、開発してたスタッフさんたちが怖い目にあったんだって!」
那子「怖い目、ってどんな?」
小波「えーと……なんだっけ?」
那子&澄「……」
澄「まぁ薄々そんな気はしてましたけどね。補足説明すると『百物語』はあの稲川淳二先生が監修したゲームで、お祓いの御札が付いてくるしちゃんと百話入ってるなんて凝ったゲームだったんです。で、怖い目にあったのは開発スタッフじゃなくて雑誌の編集者さんが記事のためにプレイしてた時で、画面に老婆の顔がどアップで映ったり音がループしたり、怖くなって電源切ろうとしたら『おせぇよ』なんて声が聞こえてきたって話ですね」
小波「怖いよねー」
那子「でもなんかそんな淡々と語られると全然怖くないなぁ」
澄「かいつまんで話しましたからね。いいですよ、じゃあ次は私の知ってる怖い話をお話しますね……」
澄「ファミコンのドラゴンクエスト1と2が復活の呪文、パスワード制だったのはもちろん知ってますよね? あれって基本的にランダムな文字列なんですけど、開発側がテストする時のためとかに特殊な文字列、例えばドラクエ1なら『ふるいけや かわずとびこむ みずのおと ばしや』なんていう名言とか文句とかも実はパスワードとして通ったりするんです」
那子「ドラクエ2の『ゆうてい みやおう きむこう ほりいゆうじ とりやまあきら ぺぺぺ~』みたいな感じ?」
澄「そうですね、それもその一つです。そういう感じで、何か特殊なパスワードがないかって、ネット住民がパソコンを使って解析していたんですが、ある奇妙なことが分かったんです」
小波「ど、どんなこと?」
澄「解析されたパスワードの例を挙げてみますね」
『たしろ まさしが またたいほ されちやう あほや』
『おしおまなぶ かくせいざい やばいぼく たいほ』
『くさなぎは はだかでそとよ ほら たいほ なのさ』
『あさだまお こおりのうえお うつくしく おどる』
『どらくえは ねとげになつて つまらない あうと』
那子「これって……予言?」
澄「そう見えますよね」
小波「じゃあ開発陣の中に預言者がいたってことなの?」
澄「いえいえ、多分そういうことではなく偶然が生み出したことなんでしょうけど……『アカシックレコード』って知ってますか?」
小波「???」
那子「あーなんか宇宙のすべてが記されてるなんちゃら、ってやつでしょ?」
澄「アバウトですけどそういうものですね。……つまりあの小さいカセットの中にもしかしたらアカシックレコートがあるのかも、っていう話です」
小波「おぉーよく分かんないけど凄いね!」
那子「確かに凄いけど……怖いってかSFチックな話だね」
澄「うぐっ……」
那子「はぁーもうしょうがないなぁ。あたしが本当の怖い話っていうのを聞かせてあげようじゃないの」
那子「この間の話なんだけどさ、2人とも用事で来れない時あったじゃん? でも早く帰るのもつまんないなーって思ってカセット漁ってたら、ラベルの付いてないカセットがあって」
那子「そしたらそれがなんか変なゲームだったんだよ」
澄「変、ってどういう?」
那子「電源つけたらタイトルも無くていきなり途中からだったんだけどさ。舞台は夕暮れの学校なんだけど、そこを3人の女の子を操作して……多分脱出しようとするの」
小波「……」
澄「多分って?」
那子「いやそれがなんの説明もなくて。ひたすらぐるぐる学校を歩くんだけど、特にイベントがあるわけじゃなくて。でも外には出られないの。だから多分何かして脱出するのが目的だと思ったんだ」
澄「ちょっと『コープスパーティー』っぽいですね?」
那子「って思うけど、そんなホラー要素もないし、なにしろファミコンなんだよ」
澄「でもそんなゲーム聞いたことないですよ?」
那子「だからホラーなんだよ。それに気持ち悪いのが……女の子たちの名前がナコ、スミ、コナミってあたし達の名前だったんだ」
小波「……それ、ボクもやった」
那子&澄「えっ!?」
小波「なこちーと同じで見たこと無いカセットだなぁって思って付けたら、放課後の教室で女の子3人がお話してる画面が出てたんだけど、いきなり扉が開く音がしたら『お前たちはここで死ぬ運命にある』ってメッセージだけ出て、なこちーが言ってたみたいな画面になったの」
那子「ってっことはあたしの前の部分を小波がやってた、ってこと?」
小波「多分。ボクもいきなりボクたちの名前が付いた子たちが学校に閉じ込められるっていうのが怖くてすぐ切ったんだ」
澄「……ちなみに小波ちゃん。そのカセットって何色でした?」
小波「えーと確か……灰色だったような?」
澄「ラベルの無い灰色のカセット……それ、私もやった」
那子&小波「えっ!?」
澄「2人と同じで見たこと無いカセットだと思って……私の場合は付けたらいきなり『3人の名前を決めてください』って画面が出て、私達3人の名前を付けたの」
那子「あ、だからあの子たちの名前が私達と一緒だったのか! 良かったぁ、ちょっとホッとした。で? 澄がやった時はどんなだったの?」
澄「私がやったのは小波ちゃんの前の部分だと思う。女の子3人が教室に入ってきて、テキストウィンドウに会話が表示されて……怖い話をし始めて……そう、ちょうど今の私達みたいな。でもその時はRPGじゃないのか、って思ってその時私はすぐ切ったの」
三人「……」
ガラガラッ
三人「!!!!」
先生「おーいお前ら、そろそろ下校時間だぞ。帰ろ―」
小波「な、なんだ高橋先生かぁー。良かったぁ」
先生「なんだお前ら、泣きそうな顔して。怖いゲームでもやってたのか」
那子「ま、まぁそんなところです。よし、じゃあ今日はみんな帰ろう! 先生玄関まで送ってってくださいよ!」
先生「なんで俺が」
澄「お願いします、先生」
先生「国江がそういうことを言うとは珍しいな……分かった。じゃあ早く用意しろよー」
三人「はーい」
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・・・・・・・・・・
澄「(あの後、私達は極力例のゲームに触れないように、いつも通りの話をして帰った。私自身、あれは単なる偶然だと思いたいところだけど、見たことのないゲームだったことは確かだし、それを三人ともプレイしていることを考えると、きっとあれは本物のオカルトだったんだろう)」
澄「(……もしも。ドラクエのパスワードのように、数ビットの中にアカッシクレコードが存在しうるのならば。『名前』だけを空白にした、アカシックレコードもどきの、現実に干渉するカセットもあってもおかしくはないのではないか。いわゆる予言の書や、”死”を必ずもたらす『リング』のビデオのような)」
澄「まさか、ね……」
けれどそれからいくら探しても、灰色のラベルのないカセットは見つかることは無かった
305開発部ログ
/ 305開発部ログ5 Comments
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変化球で来ましたね。レトロゲームも蛇足でなくちゃんと絡めてあって面白い!
これもまたKOHさんらしさの一つであるので、このパターンも混ぜちゃっていいと思いますよ。っていうか読みたい。
高橋先生ェ・・・
ところで小波エアーマンの挿絵は!?
挿絵もなしにおっぱいはやらないって約束したじゃないですかァーーーーーーッ!
本当はセガサターンじゃなくてファミコンの怖い話で通そうかと思ったけど
あんまりそういう話がなかったw
小波エアーマンの絵見たいよなぁ…(チラッ
オウフ見逃しておりました…!これはたまらんとですよ…!!!
いやはや大好きな変化球です、毛糸氏の意見に同意(・ω・)!
夏らしくていいですね、いつも軽いノリだからこそ映える感じが、
クレヨンしんちゃんのホラー回のようなそんな雰囲気がしました。
これなら俺もネタ出したいですね…└( ^ω^ )┘!!!
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