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大学の食堂と言うのは決まってお昼時には混雑するものだけれど、ピークタイムを過ぎると程よい雑談の場となることを私たちは知っている。午後最初の講義が空き時間の彼と私は、その次の講義時間までいつもここで時間をつぶす。
「いやー土曜の飲み会マジうけたわーワタル下ネタ飛ばしすぎだろ」
「ワタル君はやばかったね、パンツかぶった時は私どうしようかと思った」
彼とは学部が同じで一年の頃から親しい仲間のひとり。先日行われた仲間内での飲み会は
居酒屋に始まり、二次会は同じく同期のアヤカの家で、総勢8人でぎゅうぎゅう詰めになって愉快に行われた。
「あいつもアヤカん家のタンス開けるかフツー。笑い止まんなかったわ」
「アヤちゃんも相当酔ってたからねー、たぶん覚えてないと思うけどさ」
昼間から少し品の無い話題の様な気もするけれど、何だかんだで楽しかった会を思い出しながら
談笑している彼と私。昼食も済ませて流れるこのひとときは、何とも言えず心地が良い。
「そういや結構写真撮ってたけどさ、あれ誰のデジカメ?欲しんだけど」
「あれ私のだよ。みんな勝手に撮ってて覚えのない写真ばかりだけどさ」
「お、マジで?貸して貸して、データだけもらうわ」
「そう言われるかと思って持ってきたよ。ピンボケ多すぎて結構消したけど」
「さっすが!気が利くわー、やっぱできるオンナは違うね。」
「はいはい、聞き飽きたんですけど?」
カメラを彼に渡したあたりで、次の講義の時間が近付く。彼と私は別々の講義を受講しているため、だるい面倒くさいとボヤキながら学生ホールで別れた。行ってしまえば、そこまで面倒でもない事を知っているのにね。
文化の形成とその歴史の関係性を知ることで、我が国をまた別の面から考える事ができるのだそうだが、私にはどうでもよかった。
マイク越しに聞こえるぼそぼそと話す教授の声をよそに、私はふと思う。
ごめんね、私、ひとつ嘘をついた。
ピンボケの写真なんて、ほとんど無かったの。
消したのは、あなたとアヤカがあんまりにも仲良く写っていたから。
あなたは彼女にべったりで、隣の私が惨めに見えてしまったから。
汚い女だと思われたっていいわ。でも、だって、仕方が無いじゃない。
私はそれを平然と見ていられるほど、強くないんだもの。
少しだけ、少しだけ溢れそうな涙を堪えながら、私は黒板に目を向けた。
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ワタル君がパンツを被るお話です。
こう、クロッチがおでこあたりにくるように(ry
というわけでひさびさの小説版「ささめき」でした(・∀・)
お昼の話って何か書きやすいですね、会話させられるからかな?
305開発部ログ
/ 305開発部ログ4 Comments
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やっぱり書く人によって雰囲気って全然違うもんだなぁ…ってか悲恋もの好きすぎワロタw
ラストは分かっちゃいるけど実に乙女チックな文章で胸キュン。こういうのなんですよ…
あとは挿絵があるとやっぱり”作品”って雰囲気が出るな!
あのパンツ被ってるワタル君ってなんかデジャブを感じるー(すっとぼけ)
ありがとうございます!悲恋ものはネタ出てきやすいんで大好物ですねw
わざとらしくない、それでいて乙女らしい雰囲気を出すのに少し苦労しました。
女性目線で見た感想も気になりますね、聞いてみたいところです( ^ω^)
挿絵は懲りたい気持ちもあるんですがこういうシンプルな絵もいいのかななんて?
気のせいですよ。ちなみにパンツの主アヤカちゃんは清楚系ビッチな気がします。
この短さでここまで揺さぶられるってのがスゴイなぁ
どっからこういうアイデアが出てくるのか不思議でならないw
このネタは漫画より小説向きだね
最後ちょっとだけ語り過ぎな気がするかな。個人的には。そこで消した写真の挿絵が入るとグッときそうだけどあえて入れないのもアリやし難しい
いやあ純粋に嬉しい、そういってもらえるとやる気が起きるね!
ネタはふと思いつく事が多いよ、実体験が絡んでたり絡んでなかったり?
そうだねー漫画も考えたけど情景が上手く思いつかんかった。
最後くどいかなーとはちょい俺も思った;;
ただ彼女の気持ち的に、少し言い訳がましくなるかなーなんてw
写真の挿絵は何ともだね、漫画だったら描くけど難しいとこだわ!