珍々満語「自撮り棒」

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先日、あるところに観光に行くと、女性2人が細長い棒を持って寄り添っていた。
棒の先にはスマートフォンがくっついている。
よくよく観察すると、彼女たちは写真を撮っているようだった。

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これが噂の『自撮り棒』というやつか。
よくよく周りを見渡すと、外国人やカップルなど、様々な人が
頼りない細長い棒に大事な携帯電話を付けて掲げている。
もし落としたら大変なことになるのに、怖くないのだろうかと思ってしまう。
心配する気持ちと同じように、私の心には少しばかり寂しい気持ちも湧き上がってきた。

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旅行にはカメラが付き物だ。
昔は個人用のフィルムカメラが、『写ルンです』のようなインスタントカメラ。
時代は変わってデジタルカメラが登場した後も、自分を自分で撮るというのは難しいことだった。
でもせっかくの思い出を残したい。
そこで近くにいる人に一声かける。
「写真をお願いしてもいいですか」

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ともすれば大事な資産であるカメラを持ち逃げされるかもしれない。
意地悪な人で適当に撮られるかもしれない。
リスクを挙げれば様々あるが、そこには人を信用するという前提があった上でカメラを預けていた。
カメラだけではない。
一声かける、そのコミュニケーションで、私たちはそこの土地に行ったという
証拠の写真だけではない、何か人の温かみのようなものも一緒に残していたように思う。

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「はい、チーズ」

写真を撮る時の定番のセリフだが、こんなセリフもそのうち聞かれなくなるかもしれない――
そんなことを思いながら、無機質な鉄の棒の間を早足で抜けた。

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