「わるい、これコピーとってくれ」
「はい」
「B会議室にコーヒー3つ頼む!」
「はーい」
ドタバタと騒がしいオフィスで、いいように使われる毎日。
こんなしがないOLの私にも、実はちょっとした特技――いや、超能力があったりする。
家族構成人数が見えるのだ。
つまりどういうことかと言うと、例えばスガノ部長の頭を見てみよう。そこには4という数字が見える。これはスガノ部長を世帯主として、奥さん、子供2人の構成を表している。(※本人に確認済み)
同様に奥さんと息子、娘がいる係長の野原さんも4、父親と2人暮らし(別居中)の山岡さんは2、といった具合だ。……だからどうした、という話なんだけど。
「こんなの見えてもさぁ……」
ちょっと酸っぱい香りがするコーヒーフィルターを取り替えながら、こんな能力を与えてくれた神様を恨む。どうせなら手から火が出るとか、未来予知が出来るとか、もっと実用的とか格好いいのが良かったのに。家族構成が見えるって、保険屋さんにでもなれって?
「ん? 転職でもするの?」
しまった。声が出ていたのだろうか。恥ずかしくて声のした方を向くと、そこにはオフィス一のイケメン、そして私の片思い中の人である大沢さんが立っていた。
「いえいえ、別にそういうわけでは」
「そうなの。まぁしかしコピーだのコーヒーだの、昔のOLじゃないんだから。大変だよね」
「えぇ、まぁ……」
なぜ私に話しかけてくるんだろう。もしかして私に気があるとか? そんなトキメキを感じつつ、大沢さんの顔をよく見てみると先日まで4だった数字が3になっていた。
あれ、大沢さんは両親と妹で4人家族だったはず。3っていうことは……誰か亡くなったとか? それにしては全然悲しそうな顔はしてないし……?
「あの、大沢さん。最近……何かありました?」
「あれ、俺なんか変だった? そっかー、いや。やっぱり女性だから分かるのかな」
何をだろう。
「実はさ、みんなにはまだ内緒にしてるんだけど……結婚したんだ。最近引っ越しも……それでメシが……寝る時なんて……」
そっかぁ。そうだよね。格好いいしね、大沢さん。あれ、でもそれなら数字は2になるはずじゃ……嬉しそうに惚気ける大沢さんの話を聞き流しながら、少し考えてみる。私の能力は世帯主でカウントするため、結婚して親元を離れ別生計として生活しているならば2になるのだが、数字は3である。ということは誰かプラス1がいる……?
そこまで考えて私はある推測に至った。
「あ、大沢さん。……もしかして、できちゃった結婚ですか?」
「え? なんで分かったの……」
ですよねー。あぁ神様。なんでこんな能力を私に与えたのでしょうか。私の頭の数字が変わる日はくるのでしょうか……
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というわけで「家族」テーマの週替り更新でした。
最初は犬の話を書こうと思ってたんですが泣きたくなったのでやめました。
でもこれはこれで落ちが弱くてなぁ…
305開発部ログ
/ 305開発部ログ5 Comments
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この短い文章の中に必要最低限の情報を含めて、起承転結をしっかりまとめてられてるのがスゴイと思います!
あまり文章を読むのが得意じゃない僕でもすんなり読めちゃいますよ!
オチが弱いと言っていますが、変に切ない感じにするよりは個人的にはこれくらいあっさりしたオチの方がむしろ微笑ましくていいと思います!
やっぱりKOHさんのSS好きですよ!
あざっす!
家族って言われてありがちな感動モノよりはこういう方が求められてるかな?と思いまして書いた次第です。好きと言われて嬉しいね!
もっとビビッとくるようなを書けるように頑張るよ!
ショートショートっぽいオチですねw
爆発力はないですが上手くまとまっていて良いと思います
しかし使えそうで使えない超能力スレでも優勝できそうな能力…
色々と突っ込みどころはあるんだけど、ショートだしそこら辺はまぁいいかで書いてるw
個人的にはもうちょっとヒネれたかなぁっていう気もするけどやっぱり難しいね。
ちなみにエロ漫画じゃオナニーした数が見えるっていうのがあったりした。
短さの中にある説得力、いいですねえ。かなり好きな話です!
「声が出ていたのだろうか」って下り良いですね、主人公と同じ気分になりましたw
ちょっとだけファンタジーだけど日常感から脱しないところがとてもいいですね。
個人的には片思いの彼女に対する気持ちがもっとあると失恋のヘコみも
もっと大きくて良いのでは…と思いましたが、それは完全に僕の好みですねw