砂漠のど真ん中で、冒険者二人は途方に暮れていた。
「なぁ、本当にこんな所に宝なんてあるのかよ?」
「ああ!多分あるともさ!」
この繰り返し。失敗したな、と思った。
一攫千金の夢を語る男―
相棒の眼はキラキラと輝いていて、若かった僕はその眼を信じ、そして無為に、怠惰に流れていく生活と決別する
最後のチャンスであると奮起したのが始まりである。
「このまま普通に生活していって何が面白い!男ならロマンを求めるべきだろう!」
相棒の語り草だった。僕はいつも、そうだね、と誤魔化しの笑みを浮かべて思うのだ。
確かにその通り。嫌いな上司に媚びへつらって、好きでもない連中と酒を飲み、家では年を取って醜くなった女房に
愚痴られいびられ。そんなどこにでもあるような生活は嫌だった。もっと自分だけにしかないことをしたいと思った。
だがしかしあるかどうかも分からない宝を探すというのもいささか無謀なことだとも思っていた。
下手をすれば死ぬかもしれない。とんだ無駄足になるかもしれない。
背反する想いを胸に、あの時の、20代の僕は若さに任せて彼と同じように、不確かだが夢のある道を選んだ。
だが現実は甘くなかった。
凶暴な動物に始まり暑さや寒さといった自然の驚異に晒され、窮地に幾度となく陥った。
その度にもう諦めて帰ろうと思ったが、宝探しに危険は付き物だと笑う相棒の眼を見てまだ頑張ってみようと思った。
先に盗られていたこともあった。
悔しくて涙が出た。それでも相棒はよくあることだと寂しそうに笑って、次を目指していた。
正直、僕は限界だった。苦難の連続。楽しいことなど一つも無い。
僕は 諦めた
彼と別れて2年が経った。
仕事をした。家庭を持った。そこは思い描いた夢の生活とはかけ離れた灰色の世界だった。
それでも生きた。違う。死ぬ理由が、勇気が無かったから生きていただけで、半分僕は死んでいたんじゃないだろうか。
ある日、彼が死んだことを伝えられた。
行商人が傷だらけの彼を発見したそうだが既に手遅れで、死に際に僕宛の言付けを頼まれたと言う。
「宝は見つけた」
と言ったそうだ。満足そうな笑みを浮かべて死んだという。
町外れの小高い丘に彼の墓を作った。町が見渡せるここなら、多少は浮かばれるだろうか。
いろんな想いが去来するが、すべて流れていく。胸に残るのは一つだけ。
「なぁ この街で夢を諦めて流されるように生きる僕と、苦労して夢を叶えたがすぐ死んでしまった君。どっちが幸せだと思う―?」
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昔書いてたテキストフォルダを漁ったら出てきたヤツ。書いたのは2008年4月の朝6時。
今も結局どうなんだろうなぁとは思うんですが、考えてもどうしようもないことは放っておいて、やるべきことをやるのが一番だと思います。
他にも未完成なのとかがあるので、ちゃんと書き上げてうpしたいと思います。
みんなも書いちゃっていいんだからねっ!ライターとかなんとか固定化する気はないし、思うようにやろうぜ!
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これは文章のうまさとかでなくて、魂…ですね!
好きです!
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>>毛糸
どうせなら上手くて深い話を書けるようになりたいもんだねぇ…
伝えたいことをストレートに書くと読み物としてはイマイチなんだなぁと最近気付いた。いかに婉曲して、他のものに置き換えて、かつ分かりやすく伝えられるか。難しいなー